『网络小说』Jobless・Oblige(三)
1章 参上、その名はムーンナイト
1章 登场,其名为月之骑士
3話 現在の正義の味方
第3话 现在正义的伙伴
□
三日月の夜だった。
魔法都市シャリーアの一角には、人目に付かない古い倉庫がある。
とある商会の死蔵品を貯蔵しているそこは、現在ほとんど使われていない。
在一个新月的夜晚。
在魔法都市夏利亚的一处角落里, 有一座不起眼的旧仓库。
某一个商会用这里放置些不需要的货物,现在已经几乎不怎么使用了。
しかし、そんな場所であるにもかかわらず、ぼんやりと光るものがあった。
ロウソクの光だ。
それも二つ。
フードで顔を隠した二人の人物が、倉庫にいるのだ。
二人は無言で互いに近づいていくと、「家の扉は」「よく締めろ」と小声で合言葉を言い合い、互いを確認した。
但是,就是这样的一个地方,今晚却有着一丝丝微弱的光芒。
是蜡烛发出的亮光。
而且还有两个。
两个用风帽遮住脸的人在仓库里。
这两人无言地互相靠近,轻声地说着接头暗号【家里的门】【要关好】,来确认彼此的身份。
「例のもの、用意できたか?」
「ああ、最高級品だ」
【那个东西,准备好了吗?】
【啊啊,还是最高级的】
片方の問いに、もう片方が答え、持っていたカバンをテーブルの上に置いた。
そして中を開く。
そこには、茶色の袋が大量に詰まっていた。
カバンを持ってきた男はその一つを取り出し、確かめろと言わんばかりに相手に渡した。
一方提问,另一方回答,然后把带在身上的包放到了桌上。
接着打开了包。
里面装满了大量的茶色的袋子。
把包带来的男人从中取出一个袋子,递给了另一人像是要让他自己确认一样。
男は袋を開けると、その中にギッシリと詰まっていた白い粉を指に付け、ペロリと舐めた。
そして、頷いた。
男人接过袋子打开后,把手伸进装得满满的袋子里沾了点白色的粉末,舔了一口。
然后,点了点头。
「いいブツだ。これなら末端でもかなりの額で捌けるだろう」
「じゃあ、頂くもんをいただこう」
【这批货很好,这样的话哪怕是最末端的也值一大笔钱了吧】
【那就收下你的报酬吧】
そう言うと、白い粉を舐めた男が、懐から袋を取り出し、中から三枚の金貨を取り出した。
舔了白色粉末的男人这么说道,接着从怀里拿出了一个袋子,从里面拿出了三枚金币。
「おいおい、いくらなんでも3枚じゃ……って、これアスラ金貨じゃねえか。いいのか?」
「これだけ上等な代物を用意できる奴に渡す額なら、高くはねえ。投資だ」
【喂喂,在怎么说3枚金币也太……等下,这不是阿斯拉金币吗。可以吗?】
【对一个可以拿出这么上等的货物的人来说,这么点不算多。这次就算是投资了】
アスラ金貨。
それは最も価値の高い金貨である。
他国で扱われる金貨の数倍から十数倍の価値があるとされている。
そんなものが三枚。
大金だ。
この町でなら、しばらくは遊んで暮らせるだろう。
阿斯拉金币
是现在最有价值的金币。
比起其他国家的金币价值要高出数倍或者数十倍。
而且还是三枚。
这是一笔巨大的金额。
在这座城市的话,三枚阿斯拉金币可以用很久了。
「それとも、安いか?」
「ま、まさか、とんでもねえ。十分だ」
【还是说,太少了吗?】
【不,怎么会。足够了】
男は返せと言われる前に、素早くそれを懐へと収めた。
それを見届け、金を払った方もまた、カバンを己の方へと引き寄せた。
带了包的男人在对方收回金币前,飞快地把金币收进了自己的囊中。
看到他收下金币后,支付了金币的人,也将包裹拉向了自己的位置。
それで取引は成立。
金を払った男はカバンを閉じて手に持ち、金をもらった男は懐を隠すように前を閉じた。
この後、二人は他人のように無言で別れ、粉を運んできた男は次の粉を用意し、粉を購入した男はどこかで粉を売りさばく。
それが取引における暗黙の了解だ。
这下交易就算成立了。
支付了金币的人合上了包,收下了钱的人遮挡住了胸前。
之后,两人就像是不认识彼此一样无言地分开了,带来粉的人去准备一批货物,买下粉的人去其他地方将其卖出。
这事交易的潜规则。
「でもよ、この町で捌くのはヤバくねえか?」
【但是啊,在这卖粉不危险吗?】
しかし、そうはならなかった。
粉を用意した男が、不安そうな声を上げたのだ。
然而,这次并没有这样。
准备了粉的人,不安地问道。
「何がヤバイってんだ?」
「この町は、龍神オルステッドが裏で牛耳ってる。魔導王ルーデウスに北神カールマン。そんな危ない連中が支配してる町でこんなもん捌いたら、ヤバイことになるんじゃねえかって言ってんだよ。それとも、その辺にはもう話はつけてあんのか?」
「んなこと知ってどうすんだ?」
「……魔導王ルーデウスは、執念深いって噂だ。アンタん所から、俺のアシまでついちゃ困んだよ」
「ああ」
【什么危险?】
【龙神奥尔斯特德在暗地里掌控着这里。还有魔导王卢迪乌斯和北神卡尔曼。我的意思是在这么危险的家伙支配的城里卖这种东西,不是很危险吗?还是说你已经和他们通过关系了?】
【你知道了这些又怎么样?】
【……魔导王卢迪乌斯,据说执念非常深。要是因为你连我也被牵连了,那就不好了】
【啊啊】
男は得心がいったようにうなずいた。
龍神オルステッド。
彼は『七大列強』と呼ばれる、この世界で最強と呼ばれる武人の一人だ。
二人の配下を従えて、この魔法都市シャリーアを牛耳っている。
男人像是知道了一样点了点头。
龙神奥尔斯特德。
他被称为【七大列强】,是这世界上最强的武人之一。
他和他的两个部下,控制着魔法都市夏利亚。
二人の配下。
龍神の右腕『魔導王』ルーデウス。
龍神の左腕『北神カールマン』三世、アレクサンダー。
前者は魔術師、後者は剣士だ。
本来なら、前衛として剣を振り回す剣士のほうが血の気が多く、武闘派であるとされる。
だがこの二人において、より武闘派……いや、過激派として知られているのは、ルーデウスであった。
アスラ王国のパーティにて、ある貴族に神を侮辱されたと立腹し、町を一つ燃やし尽くしたという噂もある。そこに住む住人を、皆殺しにしたのだ。
そのルーデウスは、この町を気に入り、ルード傭兵団という私兵を集め、我が物としている。
そんな町で好き勝手に『商売』を始めればどうなるか……。
他的两个部下。
分别是龙神的右腕【魔导王】卢迪乌斯
龙神的左腕【北神卡尔曼】三世,亚历山大。
前者是魔术师,后者是剑士。
一般来说,作为前卫的剑士会更血气方刚,常被认为是武斗派。
但是,在这两人之中,被当成武斗派的……不,是过激派的,反而是卢迪乌斯。
传说,在阿斯拉王国的一场宴会中,因为某一个贵族侮辱了他所崇拜的神,他一气之下便把一座小镇烧成了灰烬。那里住的所有人,都被他杀死了。
就是这样的卢迪乌斯,很喜爱这座城市,并在这里招募了名为鲁德佣兵团的私人军队,支配了这座城市。
要是在这座城市里,随意“交易”的话……。
「別に話なんざつけちゃいねえよ。この町にしばらくいりゃあ、ルーデウスが何を気にして、何を気にしねえかってのはわかってくるからな、気に触んねえようにコイツを流通させることなんざ、いくらでもできんだよ」
【我才没和他们打过什么招呼。你在这里呆段时间就会知道,卢迪乌斯他在意什么,不在意什么,不触碰到他的底线,这东西卖出去的方法要多少有多少】
男が肩をすくめて言った。
そう、ルーデウスとて人間である。
人間である以上、好みもあるし、関心のあることにも偏りがある。
そして、人間なら、自分にとってまったく無害で、そして目障りにすらならないことに関しては、大抵無関心なのだ。
男は、そうした隙間に、粉を売りつけようというのだ。
麻薬を。
悪魔の薬を……。
男人耸了耸肩说道。
没错,卢迪乌斯也是人。
只要是人,就有自己喜爱的东西,对自己关心的东西也有所偏重。
以及,如果是人,对自己完全无害的,并且连碍眼都算不上的东西,大多数情况下都不会关心。
这个男人,好像想凭借着这点,把粉卖出去。
把麻药。
恶魔的药给……。
そして、巨万の富を得た男は笑うのだ。
踏み台にした人々の上に建てられた豪華な家でくつろぎながら、下卑た笑いを響かせるのだ。
然后,借此获得了巨大财富的这个男人便会大笑。
让低下的笑声响彻在那些被他作为踏板的人的头上建立起的豪华的家中,
しかし、その時である!
但是,就在这时!
「そうはさせない!」
【才不会让你得逞!】
倉庫の中に、声が響き渡った。
仓库中,响起了一阵声音。
「誰だ!?」
【谁!?】
二人はロウソクをかざして周囲を探る。
そして、見つけた。
頭上、天窓から一人の男が座り、見下ろしているのを。
两人把蜡烛举过头,搜索着周围。
然后,他们找到了。
在他们的头上,天窗上座着一个男人,他低头看着下面。
「な……」
【什……】
二人は絶句した。
秘密の会合がバレたから?
違う、月を背にしたその男が、不気味な兜を付けていたからだ。
顔全体を覆う、フルフェイスの兜。
しかし体の方はというと軽装で、その兜だけが宙に浮いているような違和感を覚えた。
两人太过惊讶话都说不出来了。
是因为原本秘密的交易被人发现了?
不是,是因为背对着月亮的那个男人,头上带着一个令人毛骨悚然的头盔。
脸全部都被头套遮住,摩托车用的头盔。
但是身上却是轻装,让人不禁的有一种错觉,好像是头盔单独地浮在空中一样。
「誰だ!?」
「フフ、私か? 私は闇夜に輝く銀月の騎士……」
【你是谁!?】
【哼哼,我吗?我是在黑夜中闪耀的银月骑士……】
兜の男は若干嬉しそうに言い放った。
头盔男稍微有些高兴地说道。
「正義の味方、ムーンナイト参上!」
【正义的伙伴,月之骑士登场!】
その名前に、二人は顔を見あわあせた。
そして、同じことを、もう一度聞いた。
今度は、もう少し落ち着いた声で。
听到这名后,两个男人互相看了看彼此。
然后,又一次问了同样的问题。
这一次,他们的声音稍微冷静了一点。
「誰だ?」
「悪党め! 俺の愛するこの町に、そんなものを流通させはせん! いくぞぉ!」
【谁啊你?】
【恶党们!我不会让你们在我所爱的这座城市里,贩卖这样的东西的!接招吧!】
兜の男は二度目の問いを無視した。
天窓からバッと飛び降り、二人の中央へと降り立った。
戸惑いを隠せない二人。
头盔男无视了第二次的提问。
从天窗上啪地一声跳了下来,落到了两人的当中。
两人一脸困惑。
「チッ、邪魔者か! こいつは渡さねえぞ!」
【啧,来碍事的吗!才不会交给你!】
だが、流通させないという意思は伝わったようだ。
粉を持った男は腰から剣を抜き放つ。
その鈍い銀色の光を見て、金を受け取った男は我に返った。
但是,好像头盔男想要阻止白色粉末流通到市面上的意思传达给了两个男人。
拿着粉的男人从腰上抽出长剑。
看到那缓慢的银光,拿了钱的男人终于缓过神来。
「お、おりゃ関係ねえ!」
【我、我和这事没关系!】
関係ないはずもあるまいに、そんな言葉を発しつつ、泡をくって出口へと走りだした。
だが、兜の男はそれを逃さなかった。
这种事怎么可能,男人留下这句话,慌张地朝着出口跑去。
但是,头盔男没有放过他。
「ムーンライト・ナックル!」
【月光铁拳!】
兜の男はそう叫ぶと、凄まじい速度で粉を持ってきた男の前へと回りこみ、その腹に拳を打ち込んだ。
头盔男这么吼道,用难以置信的速递绕道带粉过来的男人面前,朝着他的肚子上就是一拳。
「ぐぶっ……」
【呜……】
粉の男は口から血を流しつつ、膝から崩れ落ちた。
带粉过来的男人的嘴角流出了鲜血,接着他膝盖着地倒下了。
「なっ……!」
【什……!】
その速度と技量に、剣を抜いた男は恐れおののいた。
唐突に現れ、意味のわからないことを叫ぶ男が、自分より遥かに強い存在だと理解できてしまったのだ。
ゆえに剣を抜いたまま、近くの窓から外へと飛び出そうとした。
看到那速度和本事,拔了剑的男人吓得直发抖。
他发现了,眼前的这个突然出现说着些不明所以的话的男人,远比自己要强得多。
所以他拿着剑,移动到附近的窗户,打算从那跳出去。
「ムーンライト・ストラァイク!」
【月光强袭!】
しかし、やはり兜の男は早かった。
先ほどと同じように前へと回りこむと、今度は顔面に一発、正拳を打ち込んだ。
但是,果然还是头盔男更快。
和先前一样,头盔男转眼就来到了男人的面前,这一次,是对着男人的脸来了一拳。
「ぐべっ……」
【啊……】
男の鼻は陥没し、噴水のように血を吹き出した。
男は顔を抑えながら膝をついた。
そして、困惑と絶望の入り混じった顔で、兜の男を見上げる。
見ると、兜の男は、なおも拳を握りしめていた。
男人的鼻子被打得塌陷,血像喷泉一样喷涌而出。
男人用手捂住鼻子,跪在地上。
接着,他抬起了充满着绝望和困惑的脸,看着头盔男。
然后,他看到头盔男,重新握紧了拳头。
「まへ、わかった、俺が悪かった、悪かったから……」
「トドメだ! ムーンライト・セレナァァァデ!」
【能下,我知道了,我错了,我错了……】
【最后一招!月光夜曲!】
凄まじいアッパーカットが男の顎を貫いた。
男はのけぞりながら吹っ飛び、轟音を立てながら在庫の山へと叩きこまれた。
饱含着难以置信的力量的上勾拳重重地打在了男人的下颚上。
男人被这股强大的力量打飞,接着货物堆里传来了巨大的轰响声。
「成敗!」
【成败!】
兜の男はポーズを取ってそう言うと、数秒静止した。
それから、周囲から物音が聞こえないのを確認したかのように、スッと動き出した。
向かう先は、白い粉のカバン。
彼はその中身を取り出し、地面へと叩きつけた。
头盔男摆好了姿势这么说道,然后静止了数秒。
之后,好像是在确认了周围是否有声音之后,他便迅速地行动了。
他来到了装满白色粉末的 包前。
从中取出袋子,砸到了地上。
「こんなものは……人を堕落させるだけだ……!」
【这种东西……只会让人堕落……!】
男がそう呟くと、男の手から炎が出た。
炎は粉を焼きつくし、あっという間に灰へと変えた。
男人这么轻声念到,便从手中生出了火焰。
火焰烧起了白色的粉末,一转眼变将其变为了灰烬。
もはや、動く者はいない。
悪は滅び、悪のはびこる元凶となったものも排除された。
男はそう判断すると、「とうっ!」と叫び、天窓から倉庫の外へと出て行った。
已经没人可以动弹了。
恶被消灭,使恶蔓延的元凶也被排除了。
男人这么判断后,【哈!】地一声,便从天窗跳出了仓库离开了。
□
仮面を被った男が走る。
深夜に無人の町走る。
月をバックに、屋根から屋根へ。
すごい速度で駆けていく。
戴着假面的男子奔跑着。
在深夜无人的城市中奔跑着。
以月亮为背景,从一个屋顶跳到另一个屋顶。
用非常快的速度奔跑着。
男は町の片隅。
町の発展に伴って出来た、小さな空き地へと降り立った。
何もない空き地だ。
家を立てるにしても、もう少し広くなければ厳しいだろう。
だが、そんな空き地の中央には、かなり見えにくいのだが、一本のロープが生えていた。
男はそのロープへと近づくと、グイっと無造作に引っ張った。
すると、なんということだ!
空き地の一角がボコリという音を立てて開き、下へと続いた階段が現れたではないか。
ここは、空き地ではなかったのだ。
秘密基地だったのだ!
男子来到了城市的一角。
他来到了伴随着城市的发展而衍生出的一块小小的空地。
乍一看是一块都没有的空地。
要想在这里造栋房子,若不稍微再宽敞点恐怕会 有些困难吧。
但是,在这片空地的中央,非常的不显眼但是有一条绳子。
男子走到那条绳子边,轻易地拉下了绳子。
然后,居然!
原本空旷的地面的一部分随着哐当一声,居然出现了一条通往地下的道路。
这里并不是空地。
是秘密基地!
男は周囲を見渡し、誰も見ていないことを確認すると、ぽっかりと空いた階段へと足を進め、入り口を閉じた。
空き地は元通り、空き地へと変わる。
男子看了看四周,确认周围没有人后,便沿着楼梯走下去了,入口关了前来。
空地回到之前的状态,一片什么都没有的空地。
男は静かに階段を降りていった。
暗い階段には明かりもないが、男は何度も行き来しているのだろう、躓くこともなく、最深部へとたどり着いた。
そこで男は、人差し指を立てた。
男の指先に火が灯り、部屋の中が薄ぼんやりと照らされた。
男子安静地走下楼梯。
黑暗的楼梯并没有灯光照明,但不知是否因为男人已经来过这里无数次,他没有丝毫犹豫,一直走到了最深处。
在那里,男子竖起食指。
男子的指尖处生出了火焰,微微地照亮了房间。
テーブルに、クローゼット。
剣に、鎧、魔道具に、スクロール。
保存食に、飲料水。
簡素だが、まさに秘密基地と言うにふさわしい内装だ。
桌子、衣柜。
剑、盔甲、魔道具以及卷轴。
还有保存了的食物和饮用水。
非常的简谱,但这简直就是一个秘密基地应该有的装扮。
男は入り口付近においてあったロウソクに火を移すと、クローゼットの近くまで歩いていった。
そして、兜を外した。
中から出てきたのは、緑の髪。
まだ幼さも残る顔立ちだが、十分に成人男性としての資格は有している、そんな年齢だ。
男子将入口处附近的蜡烛点燃,随后走近衣柜。
接着,他脱去了头盔。
一头绿色的头发。
虽然还留有些稚嫩的脸,但已经到了有足够的资格被视为一个成年的男性这样的年纪。
「ふぅ」
【呼】
彼は満足げな息を一つ吐くと、クローゼットを開き、着替えを始めた。
黒ずくめの服装を脱いで、クローゼットから取り出した服に着替えると、もうそこには不審者はいない。どこにでもいる町人の姿があった。
彼は鏡で自分の姿を確認すると、秘密基地を出て行った。
他满足地深呼了一口气,打开衣柜,开始换起了衣服。
把黑色的衣服脱下,从衣柜中拿出更换的衣服换上后,这里已经不存在“可疑的人物”,只有一个随处可见的普通市民。
他在镜子前确认自己的装扮后,便离开了秘密基地。
空き地から出た後、彼は先ほどまで走っていたのが嘘だったかのように、ゆっくりと歩いた。
彼はあっちにウロウロ、こっちにウロウロと、老人のように徘徊していたが、しばらくしてある場所へとたどり着いた。
从空地中出来后,他慢慢地走着,就好像刚刚根本没有奔跑过一样,慢慢地。
他东张西望的,好像老人在散步一样,过了一会,他来到了某个地方。
住宅地の一角。
魔法都市シャリーアに住む一般的な住民は、特に怖がっているわけではないが、用がなければ近づくことはないであろう、その家。
家を覆う塀にはビッシリと蔦が巻きつけられている。
昼間に見れば蔦には花も咲いており、おしゃれでシックな印象を受けるかもしれない。
だが、夜に見ると、なんとも不気味の一言だ。
住宅区的一处房前。
在魔法都市夏利亚里住着的普通市民们,虽说并不能说感到恐惧,但如果没有什么要事,都不会靠近这里吧,这栋房子。
环绕着房子的围墙上爬满了爬山虎。
若是在白天来着的话,还可以看到爬山虎上盛开着鲜花,可能还会有种雅致时尚的印象。
但是,若是在晚上,这幅场景是多么的渗人啊。
男が門に近づくと、入り口は音もなく開いた。
門の向こう側には、誰もいない。
男はそのことを疑問にすら思わないのか、門にまで巻き付いている蔦をさらりとなでてから、敷地内に入った。
男子走到了门前,门没有发出一丝声音便自己打开了。
门的另一边,却没有任何人。
男子不知是否对此毫无疑问,轻轻地摸了摸卷到了门上的爬山虎,便走了进去。
そして、懐から鍵を取り出すと、出来る限り音を立てないように、玄関の鍵を開けた。
そ~っと、玄関を開けて、そ~っと閉める。
足音を立てないように、そ~っと中へと入り、入り口の近くにあった階段から、そ~っと二階に上がろうとする。
接着,他从怀中取出钥匙,尽可能的不发出声响,打开了前门。
轻轻地,关上了它,轻轻地。
然后他轻手轻脚地走了进去,并打算从入口处附近的楼梯走上二楼。
「おかえり」
【欢迎回来】
と、そこで声を掛けられ、男はビクリと身を震わせた。
但就在这时,一个人的声音叫住了他,男子的身子被吓得一颤。
「た、ただいま」
【我、我回来了】
男が振り返ると、そこに白髪の女がいた。
まだ若く見える彼女は、何を隠そう彼の母である。
男子回过头,那里站着一个白色头发的女子。
这位看起来还很年轻的女子,实不相瞒她便是男子的母亲。
「ジーク、こんな遅くまで、何してたの?」
【吉克,你干什么去了,这么晚了才回来?】
ジーク。
なんということだ!
緑髪の男。彼はジークだったのだ!
信じがたい事に、闇夜に輝く銀月の騎士『ムーンナイト』の正体は、ジークハルト・サラディン・グレイラットだったのだ。
吉克。
怎么回事!
这位绿发的男子。他居然是吉克!
简直无法相信,在暗夜中闪耀的银月骑士【月之骑士】的真身,居然是吉克哈特・萨拉丁・格雷莱特。
「ああ、うん。白ママこそ、なんでこんな遅くまで?」
「偶然だよ。さっきちょっと目が覚めちゃったんだ」
【啊,嗯。白妈妈才是,为什么这么晚了还不睡?】
【碰巧而已啦,刚刚稍微有点醒了】
彼女は硬直するジークの所まで歩いてくると、眉をしかめた。
她走到了身体僵直了的吉克身边,皱了下眉头。
「……喧嘩?」
「え? なんのこと?」
「首筋の所、血がついてる」
【……你打架了吗?】
【诶?什么?】
【脖子那有血】
ジークは慌てて首筋を抑えた。
彼が指先を見てみると、確かにそこには、赤黒い汚れがついていた。
先ほど殴りつけた麻薬の密売人の返り血だろう。
吉克慌忙地捂住了脖子。
他看了看手指,的确那里沾上了黑红色的污渍。
应该是先前殴打的麻药贩子时溅到的吧。
「いや、これは違うんだよ。ちょっと途中で鼻血を出しただけで……」
「はぁ……パパが何も言わないからボクも口うるさく言わないけど、あんまり心配掛けさせないでよね」
「はい、ごめんなさい」
【不是的,这个不是打架留下的。我刚刚回来的路上稍微留了点鼻血就……】
【唉……爸爸他什么都没说,所以我也不想太罗嗦,但是不要让我们太担心你了】
【嗯,对不起】
ジークはそう言うと、逃げるように階段を登っていった。
吉克这么说道,便像是逃走般地走上了楼梯。
「もう……仕事もしないでフラフラして……」
【真是的……不好好工作还到处乱晃……】
彼の母は、そんなジークの背中を見ながら、ため息をついた。
她的母亲,看着这样的吉克的背影,叹了叹气。
□
ジーク・サラディン・グレイラット。
グレイラット家の次男にして無職の男。
吉克・萨拉丁・格雷莱特。
是格雷莱特家的次男,是一个无职的男人。
しかし、彼の職業:無職とは仮の姿だった。
彼の本当の姿は、正義の味方。
闇夜に輝く銀月の騎士、ムーンナイトなのだ。
但是,他的工作:无职只是假象。
他真正的工作是正义的伙伴。
在黑夜中闪耀的银月骑士,月之骑士。
昼間はブラブラしているように見せて酒場や冒険者ギルドで情報収集。
そこで得た情報を元に、悪の気配を察知。
深夜に活動し、人知れず悪を打ち倒す。
白天他看起来在到处瞎晃,其实是在酒馆或者冒险者工会里收集情报。
从那里得到的情报中,察知恶的气息。
到了深夜,便化作月之骑士将不为人知的邪恶打倒。
彼はアスラの王立学校を卒業した後、そんな毎日を送っていた。
仕事もせずに。
他自从阿斯拉的王立学校毕业后,便一直重复着这样的生活。
不去工作也重复着这样的生活。
「――――とうっ!」
「我が名は北神カールマン三世! 呪われし悪神、オルステッドを倒し、英雄となる者だ!
その道を阻む者よ、かかってくるがいい!」
R:三世好萌。
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